前回の記事はXTCの最高傑作「イングリッシュ・セトルメント」だった訳だが、そのアルバムからシングルカットされたものを採り上げよう。
ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。
Senses Working Overtime
UK盤(1982年)
Virgin
VS462-12
Side1:VS-462-12 A1 TOWNHOUSE ⊂⊃ ᐱ
Side2:VS 462-12 B1 TOWNHOUSE ⊂⊃ ᐱ
A1. Senses Working Overtime
A2. Egyptian Solution(Homo Safari Series No. 3)
B1. Blame The Weather
B2. Tissue Tigers(The Arguers)
"Senses Working Overtime"の12インチシングル。
「イングリッシュ・セトルメント」のリリース日が1982年2月12日なのに対して、シングルはアルバムに先行して1月8日にリリースされている。リードシングル(先行シングル)というやつだ。
7インチは"Senses Working Overtime"と"Blame The Weather"と"Tissue Tigers (The Arguers)"のカップリングだが、この12インチは"Egyptian Solution"が追加収録されている。
このシングルは、UKチャート10位とXTCとしては最大のヒットとなった。
従来同様、勝手な印象を含めて、各曲を紹介しよう。
A:アンディ・パートリ��ジ作曲
C:コリン・モールディング作曲
⭐️の数:個人的に好きな度合い(最高で⭐️5つ)
A1. Senses Working Overtime (A)⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
前回の記事に書いた通り、名曲中の名曲だ。
アコギ、12弦ギター、ベース、ドラムという編成のアコースティックな音作り。
様々な展開を見せるが、メロディが良く、流れも自然なので、複雑な感じは全くしない。
メロディ、曲展開、アレンジ、どれも素晴らしく、名曲中の名曲。XTCの中で一番好きな曲。
なお、マンフレッド・マンの"5-4-3-2-1" (1964)を参考に作ったとアンディは言っているらしいが、別に似ていない。
名曲中の名曲が12インチ&45回転という密度の濃い音で聴けるのは大きい。
A2. Egyptian Solution(Homo Safari Series No. 3)(A)
⭐️⭐️⭐️
もろにデモ音源。
ずっと同じリズムとリフの繰り返し。
ホワイト・ファンク(?)と言ったら良いのだろうか?
音が良いこともあって、思いの外聴けてしまう。
David Byrneの「My Life in the Bush of Ghosts」(1981)にやや似ている?
B1. Blame The Weather (C)⭐️⭐️⭐️⭐️
マイナーコードによる曲で、やや物憂げな雰囲気。
珍しくピアノが入っている。エンディングで聴こえるジャズっぽいギターも趣味が良い。
コリンの曲の中でも良い曲で、アルバムに収録しても良かったのでは?
(その場合、"Fly On The Wall"を外すことになる、かな…)
B2. Tissue Tigers (The Arguers) (A)⭐️⭐️⭐️⭐️
アンディが得意とするひねくれポップ系。
キャッチーなメロディやリズムが楽しい曲。
これこそアルバムに収録しても良かったのでは?
(その場合、"Melt The Guns", "Leisure", "Down In The Cockpit"のいずれかを外すことになる、かな…)
なお、Tissue Tiger というのは Paper Tiger(張子の虎、こけおどし)からのアンディ造語の様で、ティッシュの様にペラペラの虎、見掛け倒しといった意味なのだろう。
以上の通り、"Senses Working Overtime"以外の3曲も良い曲が並んでおり、この12インチシングルはレベルが高い。
しかも、頗る音が良い。
12インチ&45回転ということで、音が濃密だし、それに加えて低音の鳴りが素晴らしく良い。
ベースやドラムの輪郭がくっきりとしていて、しかも跳ねる様に鳴る。
これ以上は望めまいと言えるほど、良い音だ。
そして、このジャケット。
Ken Ansell というデザイナーによるもので、イイ味出していると言うか、インパクト大だ。
そしてこの Ken Ansell、何とこのジャケットも手掛けていた。吃驚。
ということで、曲良し音良しジャケット良し。
XTCのシングルの中で、これが一番だ。
まだ続くよ、XTC…