ELDEN RING: SHADOW OF THE ERDTREE - レビュー

本編以上に彩り豊かな武具に魔法、作り込まれたボス戦を見過ごす手はないが、新鮮味と密度感の薄さなど複数の要因から悔いも残る

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「SHADOW OF THE ERDTREE」は、いわずと知れた傑作アクションRPG『ELDEN RING』の超大型DLCである。なお、本レビューはPS5版のVer 1.11に基づいた内容となる。

「追加コンテンツとしてはこれまでで最大規模」とも言及されている本DLC、その内容としては独立した新マップ「影の地」を追加するというもの。本編のマップである「狭間の地」自体、プレイ時間の目安が100時間にも及ぶ大ボリュームであったが、影の地は面積だけならそれに匹敵するほどの広大さを誇る。

余分な要素を極力排除し、ただひたすらに冒険と発見に没頭するという本作最大の魅力はそのままに、「SHADOW OF THE ERDTREE」ではより立体的なマップ構造や、もとより彩り豊かな戦闘のバリエーションをさらに増大させる新武器種や魔法の数々などが盛り込まれている。さらに格段に手強いボス敵たち、プレイヤーの選択によって大きく分岐するNPCの物語など、本編の発売から2年あまりもの長き時間を必要としたのも無理のない、チャレンジ精神に満ちた内容である。

ただし、あからさまに足りない新規のザコ敵や「無駄に広い」と言わざるを得ないエリアがいくつか見受けられ、本編と比べて物足りない密度感となっているなど、欠点も少なくない。しかしながら、ただでさえハチャメチャなボリューム感であった『ELDEN RING』の世界をさらに拡大する本DLCは全プレイヤー必携である。

新鮮味という点では今ひとつながら、洗練されたマップデザインが光る影の地

『ELDEN RING』と言えばやはり、見るものを圧倒する光景の数々が大きな魅力のひとつとなるだろう。その点は影の地においても本編同様、豊かな想像力によって作り出された、ある種の芸術と言える空間が多数存在している。

そして影の地ならではの特徴として挙げられるのが、立体的なマップ構造である。崖下に見える別のエリアに思いを馳せたり、遥か高くにそびえる���へとたどり着くために回り道を探したりと、冒険心をあおるような構成となっており、マップデザインとしては本編に負けず劣らずの高い完成度を誇っている。


遥か下方のあの場所へはどうやったらたどり着けるのか、と思案するのが楽しい道中となる。

本DLCにおいても「広大なフィールド」と「DARK SOULS」シリーズを思わせる大規模な建造物「レガシーダンジョン」などがシームレスにつながるオープンフィールドが採用されているが、そのシームレスさは本編以上に増している。たとえば、崖を降りた先が兵士たちがひしめく砦の屋上であったり、霊気流で飛び上がった先が城のバルコニーであるなどフィールドとダンジョンの境を意識させない構造も多く見受けられ、これによって探索による発見の驚きと高揚感をさらに増すことに成功している。

降りられそうな足場を見つけたと思ったらそれがダンジョンの入口だった、といった体験は影の地の特筆すべき点となる。
降りられそうな足場を見つけたと思ったらそれがダンジョンの入口だった、といった体験は影の地の特筆すべき点となる。
影の地では「鍛冶遺跡」と呼ばれる新たな形式のダンジョンが点在しており、道中では大量の鍛石、最奥にはボスではなく強力な武器を取得できる「鍛冶の祭壇」が設置されている。
影の地では「鍛冶遺跡」と呼ばれる新たな形式のダンジョンが点在しており、道中では大量の鍛石、最奥にはボスではなく強力な武器を取得できる「鍛冶の祭壇」が設置されている。

以上のとおり、見た目や構造としてのマップの出来栄えは素晴らしいものなのだが、そこに待ち受ける敵たちのバリエーションについては疑問符がついてしまう。本DLCでは、石像に擬態する鳥、角の生えた大柄な兵士、醜悪な大型亜人、生理的嫌悪感を煽る虫系統の敵などの一風変わった敵も登場するのだが、その広さに対して追加される種類は少なく、マップの多くをこれらと本編で登場した敵たちが埋めている。どこに行っても卑兵、ネズミ、大コウモリ、混種、腐敗の眷属など本編のプレイヤーであれば数え切れないほど倒してきたザコ敵たちとまたも戦い続けることになり、新鮮味という点で大きくマイナスである。


擬態する鳥が序盤のフィールドから終盤のダンジョン内部まで含めてどこにでも現れたり、ほかの新規のザコ敵についてもマイナーチェンジが頻出するなど、酷使が過ぎる配置である。

本編でも散々悩まされた手強いザコ敵「腐敗の眷属」の色が違うだけのバージョン。できれば戦いたくない面倒な相手だが、出現場所が各地に点在しているため、何度も戦う必要がある。
本編でも散々悩まされた手強いザコ敵「腐敗の眷属」の色が違うだけのバージョン。できれば戦いたくない面倒な相手だが、出現場所が各地に点在しているため、何度も戦う必要がある。
新規の野生動物ついては画像のものくらいで、あとは狼や熊や鹿、猪など狭間の地と基本的には変わりないものとなっており、まったく別の土地に来たという感覚に乏しい。
新規の野生動物ついては画像のものくらいで、あとは狼や熊や鹿、猪など狭間の地と基本的には変わりないものとなっており、まったく別の土地に来たという感覚に乏しい。

新規の野生動物については画像のものくらいで、あとは狼や熊や鹿、猪など狭間の地と基本的には変わりないものとなっており、まったく別の土地に来たという感覚に乏しい。

『ELDEN RING』はそのあまりのボリューム感から、同じ敵と戦う機会の多い作品である。DLCによってそれが解消されることを願っていたのだが、むしろ悪化してしまっており、この点に限ってはどうにかならなかったものかと、もったいなく思えてならない。

画像の「樹霊」や「飛竜」などの強敵については、本DLCマップにも繰り返し登場する。個人的には本編だけなら許容範囲内であったが、DLCでさらに何度も戦うことになると、さすがに気になってしまった。
画像の「樹霊」や「飛竜」などの強敵については、本DLCマップにも繰り返し登場する。個人的には本編だけなら許容範囲内であったが、DLCでさらに何度も戦うことになると、さすがに気になってしまった。
フィールドを徘徊する超大型の新敵。戦い方を大きく変える必要のあるマイナーチェンジバージョンが存在しているなどの工夫も見受けられるが、こちらも繰り返し戦うことになり、飽きが顔をのぞかせてしまう。
フィールドを徘徊する超大型の新敵。戦い方を大きく変える必要のあるマイナーチェンジバージョンが存在しているなどの工夫も見受けられるが、こちらも繰り返し戦うことになり、飽きが顔をのぞかせてしまう。

また、マップギミックとしても新しい発想のものは多くなく、繊細な操作が求められる狭い足場、広めな毒沼、高所から降り注ぐ狙撃、見えない床など、すっかり見慣れたものが中心となる。見た目や構造としてのマップデザインの妙もあり、思ったよりは気にならないのだが、やはり新鮮味には欠けていると言わざるを得ない。

一気に崖上へと飛び上がる「霊気流」が本編と同じく各地に配置されているが、その一部は封印されており、解放には隠されたオブジェクトを破壊する必要がある、というのも一応の新ギミックではあるが、別におもしろいものではない。
一気に崖上へと飛び上がる「霊気流」が本編と同じく各地に配置されているが、その一部は封印されており、解放には隠されたオブジェクトを破壊する必要がある、というのも一応の新ギミックではあるが、別におもしろいものではない。

こうしたザコ敵の種類やマップギミックについて若干のネタ切れを感じるなか、ほぼ唯一といえる本DLCならではのギミックが、ある特定のエリアで強制される「かくれんぼ」である。そのエリアでは「あらゆる攻撃が命中しないために撃破不可能で、即死攻撃を備えた敵が点在」し、「一度見つかるとどこまでも追ってくるため、逃亡はほぼ不可能」などの要素があり、さまざまな要因から草むらなどに身を潜めてやり過ごすしかなく、急に別ゲーとなってしまう。

対処方法もなくはないのだが、公式メッセージでも「戦おうなどと、思うな」と散々表示されることから、やはり「かくれんぼ」が正攻法となる。
対処方法もなくはないのだが、公式メッセージでも「戦おうなどと、思うな」と散々表示される。

エリア自体もかなりの面積を誇るが、霊馬「トレント」の使用が禁じられるため、ひたすらに徒歩で移動する必要がある。それだけでも苦痛なのに、配置されたアイテムについても非常に少なく探索の徒労感が強い。倒せない敵を置くことで作業になりがちな冒険に緊張感を出したいという思惑も理解できなくはないのだが、知ってのとおり本作でのステルス用のアクションはひどく限られている。関連する戦技や魔術もあるにはあるが、基本的にはただしゃがむだけである。このエリア専用のアクションが用意されているわけでもなく、このマップギミックは『ELDEN RING』でやるべきではなかったのでは、と思えてならない。

『ELDEN RING』の戦闘にさらに彩りを与える、多数の追加武器種・魔法

無視できない問題をいくつか抱えてしまっている影の地であるが、『ELDEN RING』と言えば、世界各地に散りばめられた武器や魔法を収集する過程が最大の魅力となる。むしろ、ここさえよければほかの要素には目をつむれるとも言える。その点、本DLCで収集可能な武具や魔法については、本編と同様かそれ以上にバラエティに富んだものが多数用意されている。「次はどんな武具や魔法が手に入るのだろう?」といった期待感が連続するような体験は本編と同様であるため、この点については安心していいだろう。

武器については、流麗な動きで敵を斬りつける「逆手剣」、長い刀身と振りの速さを両立した「軽大剣」、掌打と蹴りを組み合わせる「格闘」、火炎や毒などを散布する「調香瓶」、攻撃とガードを同時に行える「刺突盾」などといった多数の武器種が追加されるほか、「流紋武器」と呼ばれるナイフや槍、斧を生成して投擲する武器種など、これまでになかった発想のものが多数追加される。

新武器種だけでなく、既存の武器種にも派手さと実用性を兼ね備えたものが多数追加される。
「流紋武器」についてはスタミナ以外の消費なしで無限に投擲できる割に威力も十分も高い。遠距離攻撃手段に乏しく、攻略に不便のあった近接武器ビルドに新たな風を吹き込む重要な武器種である。<br />
「流紋武器」についてはスタミナ以外の消費なしで無限に投擲できる割に威力も十分も高い。遠距離攻撃手段に乏しく、攻略に不便のあった近接武器ビルドに新たな風を吹き込む重要な武器種である。

魔法についても、敵を吸いよせながら前進する重力弾を放つ魔術「引力弾」や術者の頭上に留まって怨霊を放つ「守護霊」などこれまでになかったタイプの攻撃魔法があり、一瞬姿を消して短距離を瞬間移動する魔術「ミリアムの消失」など一風変わったものも多い。ただでさえバリエーションに満ち溢れていた『ELDEN RING』の戦闘はさらに彩りを増すことになる。

「ミリアムの消失」から戦技へとつなげてトドメを刺す様子。普通にローリングした方が断然早く、実用性は皆無であるがロマンあふれる魔術である。
ゲームバランス面で不安になるくらいに強力な武器・魔法もいくつかある反面、あまりの低性能から使い道が思い浮かばないものも多数あるなど、本編と同じくバランス調整がかなり大味なのは玉に瑕である。
ゲームバランス面で不安になるくらいに強力な武器・魔法もいくつかある反面、あまりの低性能から使い道が思い浮かばないものも多数あるなど、本編と同じくバランス調整がかなり大味なのは玉に瑕である。

特殊な効果を付与する装備品「タリスマン」や一定時間強力な効果を付与する霊薬の配合に用いる「結晶雫」、特定の場所で霊体の仲間NPCを召喚できる「遺灰」、付け替え可能な戦技を追加する「戦灰」などといったそのほかのアイテムについても多数追加され、なかには戦闘を一変させる可能性があるほど強力なものも多い。

いわゆるジャストガードを可能とする結晶雫「弾く硬雫」。物理のみならず魔法すらもほぼ無効化できるうえに効果時間も長い。名前の通り「弾き」風の遊び方ができるようになってしまうため、まさしくゲーム性が一変する。
防具についても、被ダメージの上昇と引き換えに与ダメージを増加する「羅刹」シリーズなど興味深いものが多く用意されている。
防具についても、被ダメージの上昇と引き換えに与ダメージを増加する「羅刹」シリーズなど興味深いものが多く用意されている。

ただし、本編と同じくあまりに低い性能から使い道が思い浮かばない武���や魔法も多く存在している。筆者としてはもう探索できていない場所はないだろうといった状況にあるが、全般的に技量および信仰系統の武器・魔法が多く思えるなどの偏りも感じられ、ビルドによっては実用的なものがだいぶ絞られてしまう懸念がある。それでも、多数追加される収集物を求めて探索に熱を上げることは必定である。

大量の羽の弾丸を打ち出す祈祷「神鳥の羽」。羊すら殺せないという不自然なまでの低威力であるため、何か秘密が隠されていると信じたい。
大量の羽の弾丸を打ち出す祈祷「神鳥の羽」。羊すら殺せないという不自然なまでの低威力であるため、何か秘密が隠されていると信じたい。

以上のような素晴らしい収集に水を差しかねない本DLCの新要素であり、本編に比べて密度感が薄く感じられる大きな要因ともなっているのが「影の地の加護」システムである。これはマップの各地で取得可能な「影樹の破片」および「霊灰」と呼ばれるアイテムを集め、それと引き換えに各種の攻撃力およびカット率を影の地に限り上昇させるというもの。その効果量は1段階につき1~2%程度ながら、プレイヤーキャラの能力を上昇させる「影樹の加護」は最大で20段階ほど、召喚する霊体と霊馬の能力を高める「霊灰の加護」は10段階程度と上限が高く、影響力が大きい。

「影の地の加護」によって上昇したパラメータは黄色く表示される。終盤になると狭間の地ではありえないくらいに高いパラメータとなっている。
「影の地の加護」によって上昇したパラメータは黄色く表示される。終盤になると狭間の地ではありえないくらいに高いパラメータとなっている。

本編でも倒せないボスがいたら先にほかの場所を攻略し、キャラ強化後に再戦するのが鉄則であったが、本DLCではそれをシステムとして明示した形だと言える。詳細は後述するが、本DLCのボス戦は本編と比較してかなりの高難度となっているため、丁寧な探索が強さへと直結する「影の地の加護」は攻略に欠かせない重要な要素となる。

「影樹の破片」や「霊灰」の多くはわかりやすい場所に配置されており、普通にプレイしてればそれなりの数が集まる。どうしても困ったとき以外はそれほど意識することなく進められるだろう。
「影樹の破片」や「霊灰」の多くはわかりやすい場所に配置されており、普通にプレイしてればそれなりの数が集まる。どうしても困ったとき以外はそれほど意識することなく進められるだろう。

しかしながら、この「影の地の加護」システム、思った以上に破片や灰の設置数が多い。正確な数は把握していないが、大雑把に言うともの思わせぶりな場所の3分の1程度が「影樹の破片」と「霊灰」で埋まってしまっているように感じた。パラメータの上昇につながるため、入手がうれしくないことはないのだが、見つけるたびに「本編だったら武具や魔法が置かれていたのでは」といった考えが頭をよぎってしまい、素直に喜べなかった。

「影樹の破片」や「霊灰」が気にならないくらいに武具や魔法の設置数が多ければ問題ないのだが、残念ながらそういうわけでもない。アイテムの配置密度自体が本編に劣っているように思え、いわくありげな空間に何もないなどガッカリすることも多かった。もっと言えば、脇道からかなり進んだ先にある小さな洞穴、大回りする必要のある崖下の開けた空間など、あからさまに何かあって然るべき場所に何もないことも多く、ガッカリを通り越してゲームとして不自然に思う箇所も少なからず見受けられる。


訂正(24/07/03)

この部分で「何もない洞穴」としてスクリーンショットつきで触れた場所について、実際にはアイテムが隠されていたため、画像を削除いたしました。レビュー全体の信頼を損ないかねない大きなミスであったことを謝罪し、今後はこのようなことがないよう、検証を徹底してまいります。


こうしたさまざまな事情からあくまでも筆者の体感ながら、収集物や体験の密度感は本編に大きく劣っているように思えてならない。面積自体は本編に匹敵するほどに広いのに用意された武器や魔法の数は大幅に少ないことからそうなるのは当然とも言え、「ちょっと広すぎたのでは」や「2年あまりでは開発期間が足りなかったのでは」といった思いが頭をよった。

これまで気にかかることを散々書き連ねてしまったが、あらためて強調しておきたいのは、本作のマップを総合してみると本編にこそ及ばないものの、ある程度の密度は確保されており、冒険と戦闘、報酬の獲得を繰り返すという体験に大きな陰りはないように思えるという点である。「本編が異常な密度だっただけでこれくらいが普通」だとか「むしろ密度は高いほう」とも言えるが、『ELDEN RING』最初で最後の超大型DLCということで期待が膨らみまくっていた筆者としては物足りなかったというのもまた本音である。

プレイヤーの選択による分岐を重視したNPCイベント

密度としては本編に遠く及ばないが、影の地では共にデミゴッドの一角「ミケラ」の足跡を追う多数の仲間たちが存在しているという、本編にない大きな魅力がある。次に探索すべき場所の情報を提示してくれたり、ボス戦で仲間NPCとして呼び出せたり、ときには手合わせを所望されたりと、まさしく冒険を共に進める同志となる。

「ミケラ」が各地に残した足跡である「ミケラの十字」は遥か遠方からも見えるほどに目立つため、探索の道しるべになり得る。
「ミケラ」が各地に残した足跡である「ミケラの十字」は遥か遠方からも見えるほどに目立つため、探索の道しるべになり得る。

ボス撃破後など、マップの攻略を進めるごとに会話内容が細かく更新され、それぞれの事情やNPC同士の関係性などが徐々に明らかになっていくという、かなり力の入った構成である。本編の物語についても、多くを語らないを是とする「DARK SOULS」シリーズなどと比較としていくらかわかりやすい形式となっていたが、影の地のイベントについては思った以上に多くを語ってくれるため、さらにわかりやすい物語となっていたように思う。

アンスバッハとの初会話

加えて、影の地でのNPCイベントは「分岐」が重要視されている。プレイヤーの選択によって各キャラクターの生死すら左右するほどドラマチックに分岐する。筆者はDLCの物語を2周ほどプレイしたが、選ばなかった選択肢は無数にあり、2周では到底足りないくらいに選択肢が豊富であるため、周回のモチベーションにもつながるだろう。また、各キャラはだいたい定位置に存在しているため、イベント進行に詰まるようなこともなく、割とスムーズにイベントを進めることができた。強いて言うなら一部の展開にやや唐突感があるが、本DLCの物語は本編以上に親しみやすく、楽しめる内容となっていた。

同志たち以外のNPCも存在しており、彼らの話によって本編では明かされなかった世界の謎が少しずつ明らかになっていく。世界観という面で『ELDEN RING』に心奪われていたプレイヤーにとって本DLCを見過ごす手はないだろう。
同志たち以外のNPCも存在しており、彼らの話によって本編では明かされなかった世界の謎が少しずつ明らかになっていく。世界観という面で『ELDEN RING』に心奪われていたプレイヤーにとって本DLCを見過ごす手はないだろう。

そのような同志たちと共に挑むことになる、同ジャンルの作品の華と言えるボス戦であるが、影の地のそれは全般的にかなりよい出来栄えである。思わず見惚れるほどにカッコいいと言えるような正統派なボスから、一目見たら忘れられないほどの異形まで含め、追憶するに値する大ボスが合計で10体ほど用意されている。そして、そのいずれもが高い難度や度肝を抜かれる演出と攻撃方法、圧巻のBGMなどの相乗効果によって非常に印象深い内容となっている。

どう戦うのか見当もつかない異形など、ボス敵は本編以上にバラエティ豊かである。
どう戦うのか見当もつかない異形など、ボス敵は本編以上にバラエティ豊かである。

筆者が『ELDEN RING』をレビューした際、仲間NPCを召喚できる遺灰システムのおかげもあり、終盤を除いてボス戦はそれほど苦戦することのないままクリアへと至ってしまったが、影の地についてはだいたいどのボス戦も少なくとも5〜10回、下手をすると20回程度は死亡していたように思う。筆者がDLCの攻略を開始した際のレベルは120程度だったが、序盤だけではなく、DLC全体にわたって本編とは比較にならない高難度であると感じた。

一部のボス戦についてはその体力の多さと、複数体の仲間NPCが召喚可能となっていることなどから、いわゆるレイドボスのような感覚を味わうことなる。
一部のボス戦についてはその体力の多さと、複数体の仲間NPCが召喚可能となっていることなどから、いわゆるレイドボスのような感覚を味わうことなる。
フィールドの各地に点在する「霊廟」では独特な攻撃方法を有する人型NPCとの戦闘が待ち受けており、こちらもかなり手強い設定となっ���いる。
フィールドの各地に点在する「霊廟」では独特な攻撃方法を有する人型NPCとの戦闘が待ち受けており、こちらもかなり手強い設定となっている。

本作のボスたちはまさしく死にゲーといった手強さでありながら、何度も戦いたくなる「良ボス」が何体か存在し、あらゆる面が噛み合って戦いに心地よさすら覚えてしまう「神ボス」と言える存在すらも思い浮かぶ。本編でのボス戦に消化不良感を覚えていた玄人プレイヤーにとっては、まさに待ち望んだ内容であると言える。

個人的神ボスの筆頭「串刺し公、メスメル」。見た目と演出のカッコよさもさることながら、苛烈ながらもきちんと隙のある攻撃と高い難度を兼ね備えた素晴らしい戦いであった。
個人的神ボスの筆頭「串刺し公、メスメル」。見た目と演出のカッコよさもさることながら、苛烈ながらもきちんと隙のある攻撃と高い難度を兼ね備えた素晴らしい戦いであった。

しかしながら、最後は何というか……ちょっとばかり常軌を逸した難度であると感じた。攻撃方法自体は正統派だと思うのだが、そのあまりにも苛烈な攻撃と派手なエフェクトから「難しいとかいう以前にわけがわからない」といった状況であった。「お前が下手くそなだけ」と言われたら反論の余地もないが、あまりにチャンスに乏しく、純粋に楽しめるとは言いがたい非常に厳しい戦闘であった。個人的に本編最強の呼び声高いボス敵「マレニア」についてはそこまで苦戦しなかった覚えがあるのだが、本DLCの最後については次元の異なる難度だと感じた。幾度もの大苦戦の末になんとか撃破に至ったが、達成感よりも安堵感が勝った。

散々おどかすようなことを書いてしまったが、もちろん個人的な得手不得手は大きく、斧、特大剣、大盾ばかりを用いる脳筋スタイルでの所感に過ぎない。また、ボス戦でのマルチプレイやプレイヤー間の攻略情報の共有が解禁される発売後では大きく状況が異なる可能性も高い。それでも、これまでとは一線を画す高難度であると感じたのは事実で、影の地に挑むプレイヤーには相当な覚悟が必要となるだろう。

最後にボリュームについて語っておくと、ラスボスまでたどりつくのに25時間、撃破までにさらに5時間、クリア後に見逃していたイベントやエリアを攻略するのに追加で10時間ほどを要した。マップのほとんどを探索し尽くし、もうイベントもボスも残っていないだろうと思うに至った現在に至るまでのプレイ時間はおおよそ40時間程度であった。

本DLCの導線は、本編と比較していくらかわかりやすくなっており、それがプレイ時間の短縮につながったという側面もたしかにある。筆者は本作をはじめ多数のソウルライク作品をプレイしており、同ジャンルの作品に慣れているほうという自負もあるのであくまでプレイ時間は参考程度にしてもらいたいが、期待していたよりは小粒なDLCといった印象を抱いた。


進むべき場所を記した地図が手渡されるなど、やけに親切な設計である。発売後は他プレイヤーのメッセージによるアドバイスが得られるので、さらにわかりやすい導線となるだろう。

冷静に考えればDLCなのに並のアクションゲーム1、2本分ということで、とんでもないボリューム感ではある。というよりも、クリアするだけでも100時間が目安という狭間の地のハチャメチャなボリューム感に当てられて感覚がおかしくなっている感も否めないが、あからさまに足りていないザコ敵の種類や何もないと感じる一部のエリアなど、完成度が低いと感じる部分も少なからず存在してしまっている。というよりも、この規模のマップを2年あまりで作り出そうというのが無茶だったのでは、とすら思える。

「でも、本編だけでとんでもないボリュームなのに、そこにさらに追加されるわけだから」とか「でも、あのマップは酷すぎる」とか、「でも、追加される武器はおもしろいものばかりだし」や「でも……」といった具合に、本レビューの執筆にあたっては筆者もさまざまな思いがせめぎ合っている。不満点がひどく目立つ一方で、本編と同じくついつい夢中になってプレイし続けてしまうほどのおもしろさが「SHADOW OF THE ERDTREE」にはそなわっているからだ。

しかしながら、本DLCの出来栄え次第で『ELDEN RING』がさらなる高みへと至る可能性があっただけに、これが最初で最後のDLCと語られていることも考えると、このような悔いが残る形での終焉は非常にもったいなく思えてならない。

長所

  • 多数の武器種・魔法の追加による戦闘バリエーションのさらなる増加
  • 立体的でありながらもシームレス感の増したマップデザイン
  • 高難度と戦いの心地よさを両立する作り込まれたボス戦
  • 分岐の多さを重視した作り込まれたNPCイベント

短所

  • 新規のザコ敵の不足と既視感のあるマップギミックによる新鮮味の不足
  • あまりに苦痛な一部のエリア
  • 本編には劣る密度感

総評

もとより群を抜いたボリューム感であった『ELDEN RING』の世界を、さらに彩り豊かなものへとするDLC。無駄を極力そぎ落とし、冒険と発見に没頭するゲームデザインはそのままに、本編以上に立体的でありながらもシームレス感の増したマップデザインと、想像力に満ちた武器や魔法の追加が待っている。ごく一部を除けば、ボス戦のいずれもが高難度と戦いの心地よさを両立した素晴らしい出来栄えであり、これだけでも本DLCには高い価値がある。その反面、新規のザコ敵の不足や無駄に広いと感じてしまうエリアがいくつかあるなど、完成度が低いと言える部分も目立つ。それでも夢中になってプレイし続けてしまう魅力があるのはたしかだが、その一方で、傑作『ELDEN RING』の最初で最後のDLCとしてはもったいないと思えるのも事実だ。

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ELDEN RING: SHADOW OF THE ERDTREE

FromSoftware | 2024年6月21日
  • Platform / Topic

『ELDEN RING』のDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」レビュー 本編以上に彩り豊かな武具に魔法、作り込まれたボス戦を見過ごす手はないが、新鮮味と密度感の薄さなど複数の要因から悔いも残る

8
Great
バラエティ豊かな新武器種や魔法、手強くも心地よいボス戦という魅力は見過ごせないが、明らかに足りていない新規のザコ敵と無駄に広いと言えるエリアなど完成度の低さも散見される
ELDEN RING: SHADOW OF THE ERDTREE