WILD HEARTS - レビュー

新規IPであることの未成熟な部分も存在するが、「からくり」が本作を���性的なハンティングゲームにしている

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封建時代の日本をモチーフにした、「あづまの国」を舞台とする『WILD HEARTS』。この国では「からくり」と呼ばれる木製の機械が発達しており、「からくり」は龍脈(地中)を流れる不思議な力「天つ糸(あまついと)」で動く。「からくり」と「糸」のキーワードからは操り人形を連想するかもしれないが、「天つ糸」は電気エネルギーに近いイメージだ。

見た目、操作感、雰囲気などは「モンスターハンター」シリーズと瓜二つなのだが、この「からくり」が『WILD HEARTS』のゲームプレイを個性的なものにしている。本レビューでは、PS5版をプレイした。

戦闘の肝は「からくり」にあり

『WILD HEARTS』は、拠点となる街でストーリークエストと狩猟を繰り返してエンディングを目指すオーソドックスなハンティングゲームだ。クエストの受付口は存在せず、いずれのクエストも住民から依頼を直接受注する。本作のモンスターである「獣」の狩猟は、クエストではない場合マップ画面で直接指定して狩りに行くスタイルなので、そもそも受付が不要な設計となっている。詳しくは後述するが、クエストの受付や「モンスターハンター(以下、モンハン)」の集会所のような場所は存在しない。

攻撃は武器によって異なるが、基本的に通常攻撃が2種類、特殊攻撃が1種類。これらを3つのボタンを組み合わせて戦う。×ボタンに回避やしゃがむに割り当てることで、モンハンに操作感を近づけつつ、本作固有のアクションを使いやすい設定でプレイできた。『WILD HEARTS』の第一印象がモンハンに酷似していることもあり、プレイ初期は自然とモンハンに近いプレイスタイルで獣と戦っていた。しかし、本作独特のコツをひとつつかんだことで、プレイスタイルはどんどん異なるものになっていった。

そのコツとは、獣や状況に合わせて「連結からくり」をいかに使い分けて戦うかにある。

上空の敵をひるませる定番アクションは、「連結からくり」の「閃光花火」で落とせる。

「からくり」は大きく分けて2種類存在する。ひとつは龍脈から採取した「からくり糸」を使って動かす「基礎からくり」。もうひとつは、地脈から直接エネルギーを吸い上げて動く「龍脈からくり」。「連結からくり」は6種類ある「基礎からくり」を組み合わせたもので、特定の順番で出現させると作成できる。操作は静止した状態で「L」+「○○×」や「L」+「×△×」といった複数回ボタンを押下するようなものになっている。ワンボタンではなく、まるで実際にからくりを組み立てているような、少々入り組んだコマンド入力が必要になる。

「連結からくり」は防御やカウンター、足場としても使える「壁」や、上空の敵への目くらまし、特大威力の攻撃や、身を守るための鎧として機能するものもある。その種類はさまざまだが、そのなかでも「壁」は、敵の攻撃を受け止めたり体当たりしてきた敵を吹き飛ばすだけではなく、ジャンプ台として使うことで通常では届かない部位への攻撃を可能にする。特大ダメージを与えるきっかけにもなり、多くの敵に対して大活躍してくれる。

一言で言えば、ハンティングゲームの道具や罠類が「からくり」という形で置き換わっているとも言える。実戦では、組み立て(コマンド入力)に失敗すると隙が生まれ命が危うくなることも。緊張感ともどかしさの中で、組み上げた「からくり」のカウンターや追撃が決まるとかなり心地良い。

「連結からくり」は爆弾で直接ダメージを与えたり、罠を張って拘束するなど用途はさまざま。

「からくり」はかなり強力なのだが、「基礎からくり」を複数出して「連結からくり」を作るには、「からくりの糸」を多く消費する。マルチプレイの場合はさほど問題ないが、シングルプレイ時は枯渇しやすいため、もう少しシングルプレイ時に「連結からくり」が使いやすくなるよう糸の供給量のバランスを見直した方が良いように思う。

死にゲーに片足を突っ込んでいるかのような高い難易度も「からくり」とアイデアで乗り越えられる

「からくり」をうまく活用すると、武器によってさまざまな攻撃の変化を付けることが可能で、狩りがとても楽しくなる。その反面、本作の難易度が高い点には注意してほしい。元来ハンティングゲームの難易度は高めではあると思うが、本作でエンディングを迎えるまでの道のりは少々険しい。イメージ的には、一部の獣では死にゲー並のリトライを覚悟するレベルとなる。

難易度が高く感じる要因はいくつもある。まずひとつは、プレイヤー自身にガード系のアクションが用意されていない点だ。即死しないだけマシとも言えるが、獣は強さがある一定のラインを超えると死のコンボを使うようになる。そのため、必死になってさまざまな回避タイミングを覚える必要がある。代表例はラセツ(狼)やクロマトイ(カラス)の連続突進攻撃。どちらも突進速度が速く、なおかつ攻撃の射程距離がやたらと長いためどんなに離れていても気が抜けない。当然、距離が違うと回避するタイミングも変化するので、回避タイミングの見極めが難しくなりやすい。攻撃の種類によっては、勇気を振り絞ってこちらからも突進して回避の無敵時間で攻撃をかわす必要があるなど、回避方法の見極めも必要だ。

カウンター技(正確には受け流し)は傘に用意されている。それ以外の武器でプレイする際には、ガードやカウンター主体でハンティングゲームをプレイしていた人には少し壁を感じる。筆者の場合は、基本的にハンティングゲームはカウンター主体でプレイする人間なので、隙を見極めて攻撃する戦闘の流れをつかむのに少し時間を要した。

シンプルに獣と殴り合うだけでは、『WILD HEARTS』の世界で生き残るのは難しい。攻撃の隙が異様に少ない敵や、攻撃の出始めが異様にわかりづらい敵も存在するためだ。そこで単純に殴りに行くのではなく、「からくり」をうまく使うことで攻略の難易度が劇的に低下する。「壁」を作って大きく飛び上がり、一撃の攻撃力を増大させるだけでも倒しやすくなる。その戦法がまったく通じない獣もいるが、別の「からくり」を使うことで対処ができる。使う武器によっては、話がさらに変わることも多く、獣の装備に合わせた戦い方を模索していくのも『WILD HEARTS』の魅力のひとつだと思う。

また、本作の回復は「癒やしの水」で行うのだが、回復中は行動のキャンセルができないのも地味に難易度を上げている。

命の水はフィールドに点在しており、各ポイントで2個補給できる。

個性的に感じた武器は「和傘」「飛燕刀」「変形混」の3種類

武器は8種類用意されている。刀、弓、槌、大筒(大砲)など、武器はハンティングゲームの顔とも言える存在だが、個性を強く感じさせたのが「和傘」、「飛燕刀」、「変形混」の3種類だった。いずれもクセの強い武器だが、個人的には手数が多く、空中殺法が特徴的な「飛燕刀」が最も扱いやすかった。宙を舞うように戦う武器自体は珍しいものではない。しかし、空中での基本操作は敵の周囲を回転するよう舞う「飛燕・旋回」と、敵に急接近する「飛燕・直進」の2つとシンプルで、この扱いやすさも特徴的と言える。

「和傘」は敵の攻撃を受け流すことができる唯一の武器で、受け流しからのカウンターや、傘で空中を舞うように戦うことも可能だ。防御に優れているが、空中に舞ってからの動きが独特なので、受け流しやカウンターなどの特長をしっかり活かした適格な立ち振る舞いが必要だ。見た目以上にクセが強く、受け流しを成功させたり攻撃を当て続けたりしなければ威力が出ず、やや玄人好みの武器に感じた。

宙を舞うように戦うこともできるが、強みは傘を使った受け流し。

「変形混」は5種類、長混、双牙(トンファー)、刃圈(手裏剣)、戦矛(大剣)の形状に変形させることができる武器だ。攻撃を行うと赤く光るので、そのタイミングで形状を変化させることで次々と攻撃を繋げることも可能だ。この変形攻撃を敵に当てることでゲージが蓄積して、最大まで蓄積した状態で放つ一撃は本作最高クラスの威力を誇る。

「変形混」はサイズ感を無視する大胆な変形を行う。

スキルツリーのような武器強化

武器は強化も可能だ。スキルツリーで強化を管理する。モンハンでいう「飛龍」シリーズのような素材系統で分かれるのではなく、主に火水風土といった属性で武器の系統が枝分かれする。

ツリーは進路は上から下だけではなく、継承スキルを求めて上下左右へと自由に伸ばすことも可能だ。

武器には継承技能と呼ばれるスキルがあり、継承技能のスキルは強化先の武器に引き継ぐことが可能だ。またスキルの移動ルートは、かならずしも一方通行ではなく、進路があれば上下左右と自由に、好きなルートをたどることができる。それにより超優良なスキルをかき集めた自分だけの最強武器を作ることも可能だ。ただし継承技能は、継承先の武器の空きスロット分しか写せないので、継承技能は厳選する必要がある。

また継承先でどうしても素材の入手が困難になった場合は、お金を払う必要があるものの、強化を巻き戻すことができる。強化に費やした素材も戻ってくるので、方向性を変えたくなったら気楽に武器の再強化が可能だ。現時点で武器の系統はそれほど多くはないが、将来的なアップデートによる追加に期待した���。

装備品は主に和装 バリエーションの追加はアップデートに期待

封建時代の日本というモチーフは登場する獣や装備のデザインにも現れている。防具の見た目は着物や甲冑をベースとした和装となる。そのため見た目のバリエーションという点でやや物足りない。将来的なアップデートで装備バリエーションは増えると思うが、現時点で防具バリエーションの過度な期待は厳禁だ。なお、本編クリア後に手に入る素材を使って、所有している防具の外衣(見た目装備)を作れるようになる。

また、防具によっては「活人流」と「獣道流」という流派バージョンが存在して、流派へは通常の防具から改造することができる。オリジナルの防具はそのまま残るので、「複製品の改造防具を作れる」と表現して良いだろう。流派の防具を装備すると、その流派のポイントが増加して、流派のスキルが使えるようになる。たとえば「獣道流」の防具を多く装備すれば、より高位の「獣道流」スキルが使えるようになる。

ただし、例えば「活人流」と「獣道流」の防具を同じだけ装備すると、ポイントが相殺され流派が中立になり、どちらの流派のスキルも使えない状態になるため注意が必要だ。

同じシリーズの防具でも、流派は一部分しか用意されていないものも多い。

この流派のポイントは、「活人流」と「獣道流」のどちらかに一定値偏っていれば、その流派スキルが使えるようになる仕組みだ。なのでカラスの兜、イノシシの胴、狼の足といったバラバラの防具を装備していても、それらが例えば「活人流」で統一していれば「活人流」のスキルが発動する。そのため防具のシリーズにこだわる必要はなく、そのことがある程度装備選びに自由度みたいなものを与えている。もちろん流派を統一するという制限は発生するが、同じ種類の防具をそろえる必要はない。

狩りの効率化をもとめて試行錯誤する「狩り場の開拓」はクラフトゲームのようで楽しい

狩りの効率を良くするための「狩り場の開拓」も本作の特徴的な点だ。例えば、狩り場の拠点である「野営地」は、標準で設営されている。そのほかにも、ファストトラベルポイントとしても機能するサブの野営地を作ることができる。これは龍脈からくり「獣狩の幕屋」を設置することで野営地として機能するようになる。「獣狩の幕屋」はあくまで「からくり」なので、設置場所や設備内容に至るまで完全に自由に配置できる。

地面が平らな場所であれば、野営地を配置する場所に制限はない。

本作の主な回復手段は「癒やしの水」で、薬草のようにフィールドに点在するほか、井戸を作ることで10個の「癒やしの水」を補給できる。ただし井戸は作れる場所が固定されているので、井戸を作れるポイントを中心に拠点を作ると都合が良くなる。

井戸を拠点にするだけではなく、井戸を移動ルートの中継地点にするという考え方でもOKだ。

そして敵を探すためのからくり「獣探しの櫓(やぐら)」や、川や谷など障害物をショートカットするための龍脈からくりをうまく配置することで、効率的な狩りができる狩り場が完成する。龍脈からくりは龍脈からのエネルギーを使うので、龍脈からくりのエネルギーコストを制限内に抑える必要がある。そのため作れる野営地の数は限られるものの、狩り場の真横に設営すれば、クエスト開始直後にモンスターと即戦う芸当も一応可能だ。

この狩り場の開拓は実に楽しい。龍脈からくりを設置するためのコストは、マップに点在する龍穴を解放することで増えていく。つまり序盤は十分な量の龍脈からくりを使えない時期であり、効率的な運用が必要だ。そしてマップを見ながら、どこに野営地を設置し、どのようなショートカットルートを結ぶのか試行錯誤する。プレイヤーによっては面倒に感じる作業になりそうだが、筆者はまるでクラフトゲームに近い感覚で楽しむことができた。

龍脈は、いちど触れればマップ上から龍脈からのエネルギーを活性化させることができる。

狩り場を自分色に開拓していく作業を、クラフトゲームと感じたのは、野営地関連のからくりが充実している点にある。プレイヤーの能力を一時的に上昇させる料理を作るためのからくりや、装備を作るためのからくり、ただの飾りとしておく「たぬき」のからくりなど、さまざまなからくりが用意されている。飾りのバリエーションはそれほど多くはないが、アップデートでバリエーションが増えてくれることに期待したい。

お風呂には効能がありそうだが、単純に湯船につかれるだけのお風呂を作ることができる。

納得のいく狩り場を開拓できれば、素材を求める狩猟生活はより快適に、よ��本格的になっていく。

ストーリーは世界観をじっくり描くが地味なキャラクターがネック

本作では、「からくり」の技術が廃れてしまった街「湊」を拠点に物語が進行する。「湊」や「からくり」にまつわる背景をじっくりと描き、予想だにできなかった形で物語に大きな変化をもたらす。主人公が英雄視されすぎる部分が気になったが、人々をそうさせるほどの事件が主人公と「湊」を襲い、それは彼らを見ている者にとって引きつけられる部分でもあった。

設定の描写は丁寧だが、基本的に新しい獣と狩り場の登場とリンクするようにストーリーが進行していく流れとなっているので、ストーリーのボリュームはそれほど多くはない。個々の話は少し長めなので、感じたイメージとしては「モンスターハンター」の平均より多く感じる程度に収まっている。本当に実在していそうな、人間味のあるキャラクターが多い反面、華のあるキャラクターがいないのでストーリーは地味に感じやすいのが少々ネックだ。

設定を含めると魅力的に感じるキャラクターは多いが、全体的に華がない。

シングルプレイはプレイヤースキル次第でプレイ時間が大幅に増減する

シングルプレイでは、からくりロボット「つくも(名前変更可能)」がプレイヤーの狩猟をサポートしてくれる。初期状態では性能が低いためあまり役に立たないが、しっかり強化することで頼もしい相棒に成長する。攻撃、回復、「からくりの糸」の補給に、プレイヤーが大ダメージを受けてピンチに陥ると、挑発行動で獣ターゲットを引き受けてくれるなど大活躍だ。

「つくも」は登場する各フィールドに50体ずつ隠れており、収集要素のひとつにもなっている。「つくも」を1体を発見するとネジ1個を入手できて、そのネジを使って「つくも」を強化していける。「つくも」を強化することで、基礎からくりを作るための「からくりの糸」の最大数も増加する。

キャラクターが抱えている丸い物体が「つくも」。攻撃や支援などを最大レベルまで上げると、かなり高性能な相棒となる。
「つくも」は転がりながらプレイヤーについてくる。

シングルプレイのゲームボリュームは、プレイスタイルやプレイスキルによって大きく増減しそうだ。筆者の場合は、装備を作るための素材探索も基本的に自力で行っていた。そのためプレイ時間が余計と膨らみ、およそ88時間ほどでのクリアとなった。もしサブクエストも追いかけていたら、追加であと5~8時間ほど必要になっただろう。攻略サイトなどがあり、獣の倒し方や素材の集め方を知りながらプレイする場合は、およそ40~60時間ほどになると思う。

本作はとても難易度が高いため、ハンティングゲームの達人であれば20~30時間もあれば余裕でクリアできる難易度だが、初心者だと100時間、もしくはクリア不可能な難易度かもしれない。

エンディングまでのコンテンツのボリュームはそれほど多くないが、ゲームプレイ全体を通してみれば、ストーリーボリュームも含めて十分満足いくレベルだ。ただし、登場する獣のバリエーションについては新規IPならではの苦しさがある。

属性違いのバリエーションも含めて、登場する大型の獣はおよそ20種類ほどだ。封建時代の日本をモチーフにして登場する獣を中心に選ばれているので、ネズミやカラスが2種類ずつ登場したりする。それ自体は良いのだが、全体的なバリエーションがやや物足りない。一応、ハンティングゲームの新規IPとしては及第点と言えるレベルに達しているが、リリース直後の段階ではある程度地味なラインナップを許容する必要がある。獣は今後、無料アップデートで追加されていくそうなので、アップデートも含めて評価する必要があるだろう。

マルチプレイで楽しさが覚醒する

マルチプレイは、クエストや狩る獣を選ぶ際に「ほかの獣狩と合流する」を選択することでマルチプレイが可能だ。ほかにも、フィールド上に点在する「異夢の門」、「湊」の入り口付近に出現する来訪者(ほかのプレイヤー)に話しかけるなど、さまざまな方法でプレイヤーのセッションに進入できる。

ホストになるには、狩猟開始時に方向キーの下を押すだけで良いのだが、なぜかクエストや狩る獣を選択する時点でホストを選べない。一応、クエストや獣の選択時の「ほかの獣狩と合流する」を選んだ際に、ほかのプレイヤーがいない場合はホストを選べるのだが、ホストになる選択肢をもう少し増やしてほしい。

ほかには、拠点に設置する「からくり」の「たき火」から、セッション(ロビー)を作るまたはセッションへ参加することが可能なので覚えておこう。

そしてマルチプレイを体験して最も印象に残ったのは、他プレイヤーの立ち回りをみることで戦い方がものすごく勉強になったということだ。本作はとても難易度が高く、モンハンと同じように単純に武器の特性だけで獣を狩るのは難しい。ほかのハンティングゲームにはない考え方で戦う必要になるのだが、それに気づかされたのがマルチプレイだ。

戦い方で悩んでいたときに、マルチプレイで心の師匠に出会うことができた。彼(?)は巧巳に「からくり」を使って厄介な獣の動きを封じて戦っていた。その戦いを目にした際に、『WILD HEARTS』だから可能な戦い方に目覚めることができた。例えば「連結からくり」の「銛撃ち」を使うと限定的に獣を拘束できる。そこで獣が飛行していれば、もうひとりのプレイヤーが「閃光花火」を使って撃ち落としたり、獣が地上で動きを止めていれば「壁」を作って攻撃の起点を作るといった「からくり」による連携がとても容易になる。

「銛撃ち」で拘束後、「壁」を使った攻撃に転じる「連結からくり」を使ったコンビネーション。

そのコンビネーションは一応ひとりでも可能だが、使える「からくりの糸」の量に限りがあるため、あまり現実的ではない。マルチプレイだからこそ可能な「からくりの連携攻撃」と言ったところだろう。シングルプレイでは「からくりの糸」を大量にほしいと感じるバランスが、マルチプレイ視点ではプレイヤー間の連携に適したバランスになっている。

マルチプレイであれば、敵を引きつけ合うだけでも十分狩猟が楽になるバランスになっている。だが、こうした「からくり」のバランスにお互いのプレイヤーが気づいていれば、従来のハンティングゲームでは実現不可能な戦略的な連携をたのしむことができる。

とても好印象だが、新規IPの未成熟な部分も目立つ

本作の印象はとても良い。しかし、ゲーム設計から不具合状況に至るまで、現時点で未成熟に感じる部分が多い。気になった点をいくつか挙げていくと、まずフィールド設計。本作はフィールドもかなり細かく作り込んで世界観を表現している。そのこと自体は素晴らしいのだが、足場が複雑で引っかかりやすくて気持ちよく戦えないエリアが多い。このようなフィールド設計は、常に敵に注目しながら戦うハンティングゲームにはマッチしない。

連結のベースとなる「基礎からくり」は同時に最大4つまで装備できる。装備した「基礎からくり」の組み合わせにより、作れる「連結からくり」も変わるのだが、装備の入れ替え時に作れる「連結からくり」が表示されない。そのため、どの組み合わせでどの連結が作れるのかパターンをすべて覚える必要があり不親切だ。使う際は画面右上にコマンド表が表示されるものの、プレイ全体を通してみると「連結からくり」は使いづらくなる。

「連結からくり」は種類が多いので、どの「からくり」で作れるのかを覚えるだけでも大変。

フィールドでL2ボタンを押すと、クエストの目標などに光の風が飛んでいく。頼りになるが、風の移動速度が速すぎるためすぐ置いていかれてしまう。フィールドマップでは採取場所が光点で表示されるも、何が採れるか表示されないため使い物にならない。「つくも」は「からくりの糸」をばらまいてくれるが、背景と同化してどこにあるのかがわかりづらい。部位破壊で落ちた部位も同様に見逃しやすいケースがある。落ちた部位はマップ上に表示されないので、いちど見逃してしまったら諦めるしかない。

隠しアイテムのポイントも表示されるので地図自体は便利なのだが、採取用の素材探しでは役に立たない。

また、バグについても触れておく必要がある。進行不能になる不具合は1回あり、そして進行に支障をきたす不具合が目についてプレイ時間の肥大化も招いた。

最も残念だったのは、おそらくバグだと思うが「龍脈からくり」の「飛蔓」のバグだ。これはジップラインを飛ばすことで、長距離移動のショートカットに役立てることができる「からくり」だ。ジップラインの状態は基本的にゲームを終了しても記憶されるのだが、希にジップラインの状態がリセットされてしまったのだ。張り直せば良いだけだが、レビュー段階のバージョンではその頻度が多すぎるため、場所によってはロープの張り方を見直す必要もあった。

モンスターの情報を表示するメニューでは、モンスターの画像や詳細情報が表示されないことも。

このように、問題と感じた部分は多いが、ひとつひとつは軽微な問題だ。「からくり」を使ったハンティングの気持ちよさはそうした問題を帳消しにしてくれる。未成熟だからこそ、今後のアップデートによる進化に期待が持てる。

長所

  • からくりを使った狩り場の開拓がクラフトゲームのようで楽しい
  • オリジナリティのある、からくりを使ったバトル
  • マルチプレイ時にプレイヤーと「からくり」で連携できると楽しさが倍増する

短所

  • どれも軽微なものだが、未成熟な部分やバグが多い
  • キャラクターにやや華がない
  • 「からくり」連携の魅力を最大限に引き出せない、シングルプレイではクリア困難な難易度(人によっては長所に)

総評

戦闘はもちろんクラフト要素としても活躍する「からくり」が『WILD HEARTS』を個性的なハンティングゲームにしている。難易度はシングルプレイ時には高すぎる印象で死にゲーを思わせる。マルチプレイでは難易度も丁度よく「からくり」を使った連携を楽しめる。新規IPの未成熟な部分や不具合の数が目立つものの、致命的な欠陥は存在しない。装備や獣のバリエーションもほしくなるが、作品自体のポテンシャルはとても高く、アップデートを含む将来の成長がとても楽しみな作品だ。

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WILD HEARTS

Koei Tecmo | 2023年2月17日
  • Platform / Topic

『WILD HEARTS』レビュー 新規IPであることの未成熟な部分も存在するが、「からくり」が本作を個性的なハンティングゲームにしている

8
Great
戦闘はもちろん、クラフト要素にもなっている「からくり」が、本作を個性的なハンティングゲームにしている。シングルプレイは難易度が高めに感じるがマルチプレイでは丁度よく、「からくり」を使った連携プレイが楽しめる。新規IPの未成熟な部分や不具合の数が目立つものの、致命的な欠陥は存在しない。
WILD HEARTS