テイルズ オブ アライズ - レビュー

絶妙なゲームバランスでアクションゲーム好きには目が離せない一作

『テイルズ オブ アライズ』レビュー:絶妙なゲームバランスでアクションゲーム好きには目が離せない一作
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『テイルズ オブ』シリーズはJRPGの中で特に絵柄から声優の起用まで日本のアニメ文化の特徴が顕著に出ている作品だろう。また、戦闘ではシリーズ初期からコマンド式のターン制RPGではなく、アクティブなアクションで攻防を繰り広げることができることから没入感の高い「遊べるアニメーション」的な作風となっている。

今回レビューする『テイルズ オブ アライズ』は2016年に発売された『テイルズ オブ ベルセリア』以来の家庭用のオリジナルタイトル(いわゆるナンバリングタイトル)。開発では「継承と進化」を掲げていたそうで、ゲームをプレイしていても馴染みのあるものから近作好評だったシステムが入り混じりつつ、これまでの『テイルズ オブ』シリーズでは見られなかった要素が盛り込まれていた挑戦的な内容となっていた。

本作はストーリー性がかなり重視されているので、中盤以降の話に深く言及せず全体的な感触と、戦闘を始めとしたシステムの評価にとどめておくことをご理解いただきたい。

中世のような世界を舞台に繰り広げる反乱劇はある種の懐かしさもある

本作の物語は自然あふれる惑星ダナが科学と魔法の発達した惑星レナから一方的な侵略攻撃を受け、300年に渡る隷属関係となった経緯の説明から始まり、その後、ダナの青年で、奴隷の身分であるアルフェンに焦点があたる。

アルフェンは生まれながらにして鉄の仮面で顔を覆い、いかなる痛みも感じないという体質を持っている。奴隷として鬱屈した日々を過ごすアルフェンは、触れる者に激痛をもたらす<荊>(イバラ)という呪いを持つレナ人のシオンと出会う。

痛みを感じない体と触れるもの全てに激痛を与える二人はレナとの戦いに共闘し、旅の途中で志を共にする仲間と出会い、ダナの解放を目指すという内容。��んなダナは5つの国に分断され、それぞれのスルド(領将)と呼ばれる領主がおり、この5人を退けることが主人公一派の目的となる。

ざっと序盤のストーリーと目的を文字でさらうと、よくあるRPGの触れ込みと思うかもしれない。僕も最初、奴隷という身分を生まれたときより運命づけられ、それに抗う様を見るとどうしても『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカーを連想してしまい、そこにボーイ・ミーツ・ガールの要素を加えたような印象を受けた。

ボーイ・ミーツ・ガールの要素は『テイルズ オブ』作品の傾向としてよくあり、異性であることはおろか、生まれ育った環境も大きく異なることも珍しくない。シリーズの慣例としてもう一つ、主人公が不条理な状況に追いやられて半ば強制的に故郷をあとにする(させられる)という事例もある。今作でも奴隷という不遇な環境と、異星人でかつ異性のシオンという女性と出会うという流れでシリーズのお決まりを踏襲している。こうした急発進なスタートが『テイルズ オブ』シリーズのお決まりで、これを今作でも踏襲することでシリーズらしさを出してファンへの懐かしさや安心感を提供している。

ストーリーの流れを内容に触れない範囲で評価するなら、このゲーム独特の用語がかなり出るためストーリーの深部までの理解は初見ではやや難しいと感じるかもしれない(このシリーズはかなり特殊な用語を使うのでここも特有の要素)。目的が5つの国の領主を打ち破り、惑星ダナを開放し、自由を勝ち取るという単純明快なものなのでここを抑えていたら標準的な反乱ストーリーで、こうした内容が好きな人にはかなりおすすめできる。

登場するプレイアブルキャラクターもそれぞれが違う過去を持ち、各個人の持つ信条から特定のキャラクター同士で折り合いがつかなかったりすることも劇中で見せているが、同じ目的に対して同じベクトルが向いている上、全員が大人の対応として割り切って支え合っているため、特定のキャラクターに対して大きな嫌悪感を抱くことなく概ね安心して見られる。

また、従来の作品と比べると、キャラクターがアニメアニメした色の濃いキャラ付けではなく、ややリアリスティックに寄せたものとなっていることも今作が落ち着いてプレイできる要因の一つかと感じた。

ストーリーの補足と濃いキャラ付けの場となっていた「スキット」も今作ではかなり抑えめになっている。

街の様子やフィールドは中世ヨーロッパを下地にし、ファミコンやスーパーファミコン時代によくみられた中世ヨーロッパをモチーフに日本アニメ特有のサイキック要素や魔法を混ぜたオーソドックスなJRPGの構成となっている。加えてこの世界では奴隷に搾取的な労働をさせているということもあってか、全体的にテクノロジーがそこまで発展していなかったり、ロストテクノロジーの要素も見受けられるため、ある意味においては初作『テイルズ オブ ファンタジア』に近い部分を感じた。

各フィールド、街のグラフィックも各国の方針や事情を踏まえた多様な作りとなっており、次へ次へと冒険を進めたくなるような仕上がりで満足している。冒頭に手酷い奴隷搾取を行っているオルブス・カラグリアは文明的に退化しているような生活施設はもちろん、衛生環境もうかがえる作りとなっており、ゲーム冒頭から本作がかなり気合を入れて制作されていることが分かる。そこからオルブス・カラグリアを後にし、更に広大な世界へ足を踏み出したとき、世界の広さを思わせるフィールドグラフィックは素晴らしいの一言に尽きる。

キャラクターの服装にも言及すると、アルフェンやシオンの服装が、この世界での時代の変化や文化の違いをニュアンスでプレイヤーにそれとなく感じさせるような物となっており、よく作り込まれていると感じた。先程も、物語のあらましを軽く紹介したように、かなり特殊な用語を使う本シリーズは設定の作り込みを入念に行っており、今作でも用語はもちろん、世界観を崩さないようグラフィックデザインにかなり力を入れている。この力の入れようは過去作品を振り返ってもかなりの方だと思う。

BGMも雰囲気を損ねないのはもちろんのこと、道中行われるキャラクター同士の会話を邪魔しない落ち着いたメロディーとなっている。戦闘時のBGMは打って変わって激しいものだがボスごとに異なった楽曲で、ボスの性格やテーマが反映されたメロディーがプレイヤーの気分を盛り上げている。

戦闘システムは過去作品で好評だったシステムを更に派手に爽快感を得られやすいものへと進化

冒頭にも書いたように本作、『テイルズ オブ』シリーズの戦闘システムはリアルタイムの激しいアクションバトルで、かなり日本のアニメの特徴が出ている。

基礎的な操作方法を簡単に紹介する。なお、筆者はPS5を用いてプレイしている。まず、移動は左スティックでプレイキャラをフィールド上で自由に動かすことができる。攻撃方法はR1ボタンで通常攻撃、✕、□、△のボタンにそれぞれ術技をセットしてこれらを組み合わせて戦うことになる。術技のセットはストーリーが進むとサブのセットを組むことができ、L2ボタンを長押しすることでサブセットを出し、この状態で入力すると発動させる���とができる。

他のアクションとしてはジャンプ(◯ボタン)、回避またはガード(R2ボタン)、ターゲットの切り替え(L1)、ブーストアタックやブーストストライク(十字ボタン)がある。回避には敵の攻撃に合わせて回避するジャスト回避というものもあり、これを使うと習得しているスキルによっては使用しているキャラがバトルを有利に進められるようなる。

ここでキャラクターの特性を分類すると、アルフェンは近接攻撃が得意でかつシリーズの主人公の系譜を引く伝統的な剣戟キャラ。シオンは銃を武器に戦うというやや珍しい遠距離攻撃を持ちつつ、回復術と術攻撃ができる。リンウェルは典型的な魔法攻撃一辺倒の術攻撃キャラ。ロウは素早い近接攻撃を得意とする格闘系キャラで、他のキャラクターよりも敵のスーパーアーマーを破る特性がある。キサラは大きな盾とスタッフを武器に戦うガードカウンターキャラで、一部の技はガードしながら発動させることができる。テュオハリムは術攻撃、回復術に加えて近接攻撃もできるシオンと真逆の立ち位置で、回避をうまく行うと武器が如意棒のように伸びて絶大なリーチが得られる。

プレイヤーは主に操作キャラクターに注力すれば良いのだが、戦闘に参加しているその他のメンバーはどうかというと、設定されたAIに基づいて自動で戦闘を行う。このAIの設定はかなり優秀で、プレイヤーが構築した作戦の内容に沿いつつ積極的に戦闘に参加するので、AIの行動にイライラすることはなかった。

作戦はゲーム開始時から条件から行動まで細かく設定することができるため、ある程度戦闘システムに理解ができたら好みの戦闘スタイルを構築するといいだろう。中には、敵の強烈な一撃に備えて敵との距離を大きく離して攻撃回避に専念させるという作戦も組めるため有効活用すると良い。

攻撃は一方的に無尽蔵に出すことができるのかというとそうでもなく、ちゃんとしたルールがある。まず、通常攻撃は一連のコンボの中で続けて3回まで出すことができる。この回数は別途、キャラクターにスキルを付与する「スキルパネル」で習得していくと回数が増えていく。通常攻撃は技を出した後にも繰り出すことができるので、コンボを安定して繋げるために敵の態勢、状態を観察して臨機応変に技と技の間に通常攻撃を挟むことも一つの手。

スキルパネルはストーリーやサブイベントをきっかけにキャラクターへ”称号”が与えられると増えていく。スキルの習得は戦闘後やサブイベントの後にもらえるSPを消費する。

技や術は過去作品では「TP」という他のRPG作品でいうところのMPを消費して使用していたが、本作では「AG(アーツゲージ)」というゲージを消費して発動する。AGは操作しているキャラクターのHPゲージの上に表示されているいくつかのひし形のアイコン。これもスキルパネルで開放することで増やすことができるので積極的に習得していきたい。AGの消費量は術技によってそれぞれ決められているため、プレイヤーは闇雲に術技を発動させるのではなく、ある程度計画を立てて発動することになる。AGは消費すると、コンボの途切れたときに自然回復したり、スキル習得でクリティカル発生時に回復したり、後ほど紹介する「ブーストアタック」を使用したときに一定量回復するので、消費後の事はあまり気しなくていい。

ここで少し小話にはいるが、『テイルズ オブ』シリーズは初期から術技の使用回数のカウントを実装しており、技がある一定の回数に達したら新技を覚えるというシステムが導入されてきた。今作でもこれは踏襲されており、術技を一定回数使用して新技を覚えることになる。そのためあまり使い勝手が良くなくても最低100回は使うようにしておくのがベスト。また、術技はカウントが多く貯まれば貯まるほどその術技の威力が強化されていく。今作の術技をすべて覚えるためにどれだけの回数をこなさないといけないかは不明だが、お気に入りの技を見つけたら積極的に使っていくと良い。

これを苦行と感じる人もいるかもしれない。僕も正直云うとこの恒例行事は苦行だと感じている。せめてお助けアイテムとして使用カウントを倍にしてくれるアイテムを用意してくれたら助かるのだが、AGシステムである以上叶わない夢というもの。しかしそれでもつらい……。

もう一つのシステム「BG(ブーストゲージ)」は戦闘中の画面左下にある、キャラクターの顔の横に表示されているもので、使用するとブーストアタックという特殊なアクションが行える。例えばアルフェンだと敵を仰け反らせ、シオンは空中にいる敵を叩き落とし、リンフェルは術を詠唱中の敵を妨害し、さらにその術を自分のものとすることができるなど、キャラクターごとに効果の異なる強力な技を繰り出すことができる。BGはブーストアクションを使用すると時間経過で回復するが、スキルパネルで回復手段を増やすこともできるのでゲーム中はAG関連のスキルと併せて優先的に習得していきたい。

一見するとただの戦局を有利にすすめるための特殊アクションかと思いきや、今作には「ブーストストライク」という一撃必殺のアクションがあるため、ブーストアタックの発動はキャラの特性とバトルの状況に噛み合わない時であっても、積極的に使っていきたい。

そんな「ブーストストライク」は本作最大の目玉ポイントだろう。バトル中、一体の敵に多くのコンボ数を与えていると、「STRIKE」という文字と十字ボタンのアイコンが大きく表示される。

ここですかさずどれでも良いのでボタンを押すと、十字に対応��たキャラとランダムに選ばれたもう一人のキャラが協力して一撃必殺級の大ダメージを与える。ボス級の敵以外であれば、一撃で撃破できる状態になるとBSを発動できる。使用時にはBGを消費しないため、戦闘が開始されたらこのブーストストライクを目指してガンガン攻撃に専念していただきたい。このブーストストライクのコツが分かるとほとんどのバトルをこれで締める事ができるようになり、バトルの爽快感がグンと上がる。テンションもグングンあがる。バトル狂の僕はストーリーそっちのけで戦いに明け暮れていた。

一番気に入っているブーストストライクがこれ。おそらく第1作目「ファンタジア」のダオスレーザーを意識していると思う。だから好き。

そして今作の秘奥義についてだが、バトル中ダメージを受けたり、ジャスト回避を成功させると「オーバーリミッツ」という特殊な状態に入る。この状態になるとAGに関係なく術技を使用できたり、完全なスーパーアーマー状態となるため攻撃し放題になるのだが、術技を使用した後に△、□、✕のいずれかのボタンを2つ長押しすると「秘奥義」が発動できる。

これは使用すると超絶大なダメージを与えられるシリーズの伝統技で、カットインや演出は厨二心をくすぐられる物となっているため、遠慮することなく使用してその爽快感を感じてほしい。秘奥義を使用するとオーバーリミッツ状態が解除されるので、オーバーリミッツゲージがあと僅かという時に発動するのがセオリーだ。

こうした仕様のため秘奥義がお目にかかりにくいのはシリーズの伝統であるものの、今作は秘奥義よりもブーストストライクが演出もかっこいい上にガンガン出せて、爽快感も秘奥義と比べても遜色なく感じられる。結果、ブーストストライクの方が秘奥義よりも楽しいという逆転現象が自分の中で起きている。過去作には合体秘奥義というものもあったが、ブーストストライクは強力な連携攻撃が手軽に出せる上に、演出も劣っていない。ただ、これらの強力な技を使いこなせるかどうかでこのゲームの評価は大きく分かれると思う。その理由に本作の難易度が歴代でもかなり高い方になっているということにある。

本作の難易度を上げたCPシステムと回復アイテムの高額化は賛否分かれるかもしれないが、ゲームバランスは取れている

今作はバトル中に回復効果のある術技を使用する際、AGだけでなくCP(キュアポイント)という別に用意されたポイントを消費する。他にもフィールド上でアルフェン一行の行く手を阻む壁や燃え盛る炎、倒れている民間人の回復に際して消費することとなる。

CPの回復はオレンジグミといった専用アイテムや食事の効果、宿屋、フィールド上の特定のポイントで野宿をする野営地で回復する。CPの上限はキャラクターのレベルアップや、特定の強敵を倒すことで上げることができる。

こうみるとゲームシステムとしてCPは一見なんの問題も無いように思えるが、割とCPは枯渇気味になり、ゲーム中では戦闘中のキャラクターの回復ができないのはおろか、HP、CP共に極度の回復アイテム不足に陥ってあえなく全滅。なんてことも珍しくない。

はっきり言って今作はノーマルでも歴代シリーズの中でかなりの高い方になっていると思が、ゲームバランスはかなり調整され安定している。先程紹介した本作の戦闘システムでもなんとなく分かるように、攻撃でゴリゴリに押せるからこそのCPシステムであると考えたらよく考えられたものだと思う。ただ、難易度は高い。その難易度を上げている要因を少し紹介しよう。

1つ目はCPを消費するフィールド上のイベントの存在。これはプレイヤーにそれを行うかどうかは選択する自由があるので特段これと言ってやる必要が感じられなかったら無視しても良いのだが、大抵CPを消費して障害物を取り除いた先にはその時点で良いアイテムがあったり、困っている人を助けた際にはお礼がもらえるなどそれなりのリターンがあるのでスルーするのはオススメしない。ただ、こういったところでCPを消費するということはその分枯渇が進み、回復することができなくなるので戦闘ではあまり無茶ができなくなり、ジャスト回避でダメージ0を狙うことになる。

2つ目は回復アイテムの高額化と所持制限だ。もともと『テイルズ オブ』シリーズはHPを回復するアップルグミやTP(今作でいうところのCP)を回復するオレンジグミといった直接的に回復するアイテムには所持制限が15個と決められており、今作でもそれが踏襲されている。仮に制限いっぱいまで回復アイテムを所持し、ダメージを負った状態でバトルを終了した際に敵から回復アイテムをドロップしても、所持制限の関係から否応なく捨てられてしまう。捨てる前に使わせて欲しいと思うところだが、そうした問いかけはゲーム側から行われることなく非情にも捨てられる。

宝箱など、道中に落ちているものを拾う前には「拾わずに捨てる」という確認メッセージが出るので、事前にダメージを負っているキャラに拾得対象のアイテムを手持ちから使用してそれから拾うというインベントリの調整をすることができる。他のシリーズ作品ではこうしたことはあまり問題にならなかったが、回復手段の乏しい本作にとっては難易度を上げる大きな要因になっている。そこに加えてこれらの回復アイテムが高額化しているのがプレイヤーの頭を悩ませる厄介な点になっている。

アップルグミの場合だと通例、50~100ガルドだったものが、今作では500ガルドとおいそれと手が出せないような価格になっている。CPを回復するオレンジグミにいたっては通例100~200ガルドのものが3000ガルド、戦闘不能を回復するライフボトルも通例400~500ガルドのところが1000ガルドと軒並み高額化している。

収入の方はというと、今作は戦闘後に敵がガルド、お金を落とすというのではなく敵の落とした価値のあるアイテムを売ることでお金にするか、サブイベントをこなしてお金を得るかというかなり現実的なシステムになっている。とりあえずフィールドに居る敵を倒し、拾得物を一通り集めてゲームを進め、回復アイテムの補充が十分できるほどのお金を持ち合わせていても、今度は装備を整えるお金が足りなくなることがあるため慢性的な金欠感は否めない。

加えて、今まで回復アイテムは「最大HPの〇〇%」回復だったのに今作は固定回復になっている

現実の世界でも金欠は死活問題だが、このゲームでもそれは同じ。だからといってすぐにお金が作れるわけでもないので難しいところ。逆に容易にお金を稼げた場合、回復アイテムをしこたま用意して、間接的にお金で殴るゲームになっていただろう。そのためこのCPシステムはよく考えられたものだと思う。今作のゲームとしてのバランスは絶妙な感じである。

一応補足すると、今作にもシリーズの伝統である「料理」があり、これでCPやHPを回復させる事もできるが、CPの枯渇気味になる問題をひっくり返せるほどの劇的な効果が望めるわけではないので期待しすぎないようにしたほうが良い。

探索要素とサブイベントが充実し、ファストトラベルも手軽なため寄り道が楽しい

本作のフィールドはオープンワールドのようなどこまでも自由な空間が続いているというものではなく、決められたマップを移動する昔ながらのRPGでよくみられた形式となっている。残念なことに今作では殆どの街にある一般家屋に立ち入ることはできず、以前までのシリーズ作品と比べて散策要素が薄くなってしまった(そもそも一般家屋に無断で立ち入る主人公サイドがおかしいだけだが)。

一見するとかなり探索要素が薄くなり、リニア式ゲームの様になっているのかと思うかもしれないが、本作も従来のシリーズ作品同様にサブイベントが充実しているため、寄り道をすることも多くなると思う。

サブイベントでは先程も紹介したように所持金を増やすことができる上、スキルパネルで新しいスキルを習得するためのSPというポイントも入手できるためゲームをスムーズかつ快適に進めるためには極力サブイベントはこなしておいたほうが良い。また、今作はストーリー、サブイベント共に目的地マーカーも用意されているので迷うことはあまりないかと思う。もちろん、設定画面ではこれらのマーカーを消すこともできるので自分の力で探索したい場合にはマーカーを消すと良いだろう。加えてこれらの移動を楽にするためのファストトラベル機能も実装されており、割と今作のプレイはストーリー突破だけだったらかなりサクサク進む人も出てくるだろう。

最後にいくつか不便に感じた点をいくつかあげて終わりにしよう。まず1つ目は多くの部分で文字が小さいと感じることだ。ストーリーやストーリーの補足をするスキットで表示される字幕は問題ないのだが、メニュー画面やスキル拾得をするスキルパネルの画面では名称から説明文の文字がかなり小さいように感じた。

スキルパネルでは拡縮という機能があるのでこれを使えば改善するかと思いきや、表示される絵が拡大されるだけで文字の拡大がされなかった。一応32インチのモニターを使っているが、それでも小さすぎるんじゃないかと思うほど。この辺はアップデートで対応可能だと思うので、対応してほしいところだ。

もう一つはフィールド移動時、散策時のボタンマッピングがあまり良くない上に、ユーザー側でカスタムできないということ。

フィールド上での操作をいくつか紹介すると◯ボタンでジャンプ、□ボタンでマップを開く、✕ボタンでNPCとの会話や調べる、Optionボタンで一時停止、タッチパッドでメニュー画面と他のジャンルのゲームと比べても少し変わったマッピングとなっている。PS5で◯と✕が逆になったとはいえど、キャラクターを動かすアクション部分で変えるべきではないし、□ボタンでマップを��くというのもあまり聞かないし慣れないので、何度もいつもの慣れからタッチパッドで開くものだと思い込んでメニュー画面を開くという煩わしさを感じている。10時間過ぎたら流石に学習するが、意識していないと同じようなミスを何度もした。

ゲーム開始直後は流石にやり辛いと感じたのでキーコンフィグで自分の好みのセッティングをしようかと試みたら戦闘時のキーコンフィグしかできないではないか。これは早急のアップデート対応をするべきだろう。

そんなボタンマッピングではあるが感心するところもあった。十字キーの右はスキルパネル、左は活動記録(現在の目的確認)、下はヘルプとメニュー画面で頻繁に使われるところのショートカットになっているのでこの辺は良く考えられたなと思った。

今作は5年ぶりの家庭用のオリジナルタイトルだったが、従来のシリーズ作品を重んじるだけでなく、そこからさらに先に進んだ意欲的で爽快感のあるゲームとなっていた。キャラクターのグラフィックやキャラ付けは他シリーズと比べるとやや抑えめであるものの新規のファン層を獲得しつつ、既存のファンに新鮮な息吹を吹き込んでいるものとなっていて、この舵取りは成功していると思う。

RPGとなると、かなり長い時間、腰を据えてじっくりを遊ぶためなかなか手を出しづらいジャンルではあるが、爽快感のあるド派手なアクションゲームというとっかかりから遊んで欲しいと思う作品だった。ここから更に新しいシリーズ作品が続いてくれることを切に願う。

長所

  • 爽快感高いバトルシステムとそこに緊張感を与えるCPシステムの程よいバランス
  • 従来のシリーズ作品と比べて落ち着いたキャラ付けとなったキャラクターたち
  • 流れを読みやすいシンプルなストーリー構成

短所

  • フィールド移動時のボタンマッピングを変更できない
  • 一部メニューの文字が小さい

総評

5年ぶりの家庭用オリジナルタイトルとなった本作はシリーズ作品の伝統を守りつつ新しい要素を積極的に取り入れたことで大きな前進を果たした意欲的な作品となった。 バトルシステムはやや複雑であるものの、習得すれば絶大な爽快感が感じられる作りとなっており、ゲーム内でさらなる高みを目指すキャラクターと気持ちがシンクロすること間違いなし。そこに絶妙な感じで添えられている回復を制限するシステムは、ゲームに緊張感とバランスを与え、本作はアクションゲーム好きとしては目が離せない一品となった。

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『テイルズ オブ アライズ』レビュー:絶妙なゲームバランスでアクションゲーム好きには目が離せない一作

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5年ぶりの家庭用オリジナルタイトルとなった本作はシリーズ作品の伝統を守りつつ新しい要素を積極的に取り入れたことで大きな前進を果たした意欲的な作品となった。 バトルシステムはやや複雑であるものの、習得すれば絶大な爽快感が感じられる作りとなっており、ゲーム内でさらなる高みを目指すキャラクターと気持ちがシンクロすること間違いなし。そこに絶妙な感じで添えられている回復を制限するシステムは、ゲームに緊張感とバランスを与え、本作はアクションゲーム好きとしては目が離せない一品となった。
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