ミニファミコンが中国で「パワーアップ」!?「400タイトル」収録の海賊版ミニファミコンを文化面まで徹底解剖

中国語の辞書に「売れ切れ御免」の文字はない

ミニファミコンが中国で「パワーアップ」!? 「400タイトル」収録の海賊版ミニファミコンを文化面まで徹底解剖 - ニンテンドークラシックミニファミリーコンピューター
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11月10日に発売されたニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ(ミニファミコン)が初週で26万の販売台数を記録し、いわゆる海外版ミニファミコンの「NES Classic Edition」がローンチ日にインターネットオークションサイトeBayで18秒に1台売れたと報道されている中、莫大なゲーマー人口を擁する中国でもミニファミコンが大騒ぎとなっている。乗り遅れた日本のファンは「販売終了」の看板を見てがっかりするかもしれないが、中国人は出荷台数の少なさに対して我流の"解決策"があった。「山寨(シャンジャイ)」(中国の流行語で「海賊版」の意味)という茨の道があるのだ。

日本版のファミコンも欧米版のNESも中国語で「任天堂」と呼ばれるが、それぞれの色調から前者が「紅白機」、後者が「灰機」と分けられている。いま話題(問題?)になっているのは中国製の「迷你(ミニ)紅白機」だ。

山寨版の迷你紅白機の外観。(※本稿では断りのない限り、掲載画像は中国のECサイト「淘寶」上でキャプチャーしたものである。)

中国でも、「80後」「90後」と呼ばれる80年代~90年代生まれの人の多くは、ファミコンと共に子供時代を過ごした。そのため、現代的なゲームのファン層の厚さに加え、レトロゲームへの需要も非常に高まっている。往年の30本の名作を収録したミニファミコンが垂涎の的になるのは言うまでもなく、需給バランスがあっという間に崩壊した。だが、ここで日本人の常識で考えてはいけない。中国では、見えざる手が日本と違う形で全てを導いているのだ。山寨版の迷你紅白機は自然の摂理の如く、任天堂製のミニファミコンが発売した翌日に、中国最大のECサイト「淘寶(タオバオ)」に堂々と登場した。

山寨版は正規版ミニファミコンの寸法や小型コントローラーを「複製」しながら、プリインストールされているゲームの顔触れを大幅にパワーアップさせた。なんと「400タイトル」(重複無し)が収録されているというのだ。メーカーは不明だが、淘寶���は専用カテゴリーが作られたほど無数の出品者によって販売されている。値段は出品者によってまちまちだが、多くは200人民元(約3200円)以内で売られている。

淘寶内で「2016年11月11日発売」と明記されている。また、値段には運送費が含まれる。迅速な宅配便として有名な「順豐速運(S.F. Express)」を利用して、中国のどこへも3日以内に届くそうだ。

気になるソフトのラインアップだが、正規版に収録された30作品以外にも、「ファイナルファイト」や「バトルシティー」、「高橋名人の冒険島」といったユニバーサルタイトルから、「中國象棋(シャンチー=中国将棋)」のような古くからの中華文明を色濃く反映するゲーム、そして「ポケットモンスター」や「ストリートファイター」、「モータルコンバット」といったファミコン版が公式にリリースされていないタイトルまで網羅しているようだ。ただし全タイトルのリストが出回っておらず、本当に「重複無し」の400本のゲームが入っているのかが不明だ。

明らかに正規版の公式サイトを模倣する紹介画像。
「80後」「90後」のゲーマー心に訴求する一部の収録ゲームの画面。

山寨版迷你紅白機の外観は正規版に酷似しているが、よく見れば材質が異なることが分かる。後部に古き良き時代を想起させる三色の出力端子を採用していることも任天堂製のミニファミコンとは顕著に違う。

お尻は残念な感じが否めない。

箱も正規版を模倣しているが、文字は淘寶内の紹介ページで使用されている中国本土の簡体字(簡略化された漢字)ではなく、香港や台湾で使われている繁体字(いわゆる旧字体)を使っている。中華圏の中でも、簡体字文化圏より繁体字文化圏が格段に進んでいるという認識があり、香港・台湾の製品に似せることで商品の信頼性を高める思惑があると見られる。

香港人と台湾人が怒りそうな箱(の文字)

なお、少数ではあるが任天堂製ミニファミコンの現在の取引価格(700元以上)と同等の価格設定をしている詐欺まがいの出品者もおり、正規版だと勘違いして購入する被害者が出そうだ。

中国の山寨と言えば、今月上旬に中国から「600種類」のファミコン用ゲームを搭載したゲーム機「小霸王」を仕入れた日本人の男が国内で逮捕されたばかり。中国では昔より数十本から数百本以上のタイトルを収録したゲームカセットが普通に販売されており、その進化版は数百タイトルがあらかじめ入っているゲーム機である。多くの中国人レトロゲーマーがいまだに愛用している「小霸王」には今回の容疑者が所有する携帯型だけでなく、ファミコンとサイズも見た目もそっくりな据え置き型もあり、カセットのないミニファミコンと違って1本のカセットが同梱され、新規カセットを追加することもできる。

据え置き型「小霸王」
携帯型「小霸王」(京都府警に押収されたもの。「産経新聞」より)

このような背景があるため、正規版のミニファミコンに対しては元より「収録本数が"たった"30本だけか」「拡張性がないぞ」といった批判があった。需給バランスが目に見えて崩壊する中で登場した山寨版迷你紅白機は、海賊版文化に慣れた人々の不満と欲求の受け皿になったに過ぎないという見方もある。

なお、今こそ海賊版が街で販売される風景が中国本土の特徴的なものになってしまったが、大量のゲームが入るゲームカセットやCD-ROMのコピー品はかつて香港や台湾でも市民の日常生活の一部だった。日本との経済格差が大きかった時代、安価の海賊版は中華圏に日本のコンテンツを普及させるという役割を果たした。中国本土でもいつか役割を果たし終えた山寨が姿を消して歴史の一部となるだろう。

最後に老婆心から一言。間違っても山寨版迷你紅白機をはじめとした海賊版ものをネットで検索したり、妙な興味を持ったりしないように。ダメ。ゼッタイ。

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